営業社員を1人採用するか営業代行へ外注するか|コストと成果を徹底比較
「売上を伸ばすために、営業社員をもう1人採用したい」
そう考えている経営者や営業責任者は多いのではないでしょうか。
しかし、営業人材を増やす方法は、正社員の採用だけではありません。営業代行会社へ業務を外注し、必要な期間だけ外部の営業力を活用する方法もあります。
正社員採用と営業代行では、費用の発生方法、営業開始までの期間、成果が出るまでのスピード、契約終了時のリスクが大きく異なります。
大切なのは、単純な年間費用だけで比較するのではなく、
・営業を開始できるまでの期間
・実際に成果を期待できる稼働期間
・採用や退職のリスク
・固定費と変動費の違い
・営業ノウハウを社内に残したいか
まで含めて判断することです。
この記事では、営業社員を1人採用する場合と、営業代行へ外注する場合のコストや成果をシミュレーションし、それぞれに向いている企業を解説します。
営業社員を1人採用する場合に必要なコスト
営業社員を採用する際は、毎月の給与だけでなく、採用活動、社会保険、教育、営業環境の整備など、さまざまな費用が発生します。
採用活動にかかる費用
営業社員を募集するためには、次のような採用費用が必要です。
・求人媒体への掲載費
・人材紹介会社への手数料
・採用ページや会社案内の制作費
・面接や選考にかかる担当者の人件費
・入社前後の事務手続き費用
採用方法や求める経験によっては、数十万円から100万円以上の費用が必要になる場合もあります。
特に即戦力の営業経験者を採用する場合は、採用コストが高くなりやすい傾向があります。
給与以外にも会社負担が発生する
正社員を雇用すると、会社が負担するのは給与だけではありません。
・賞与
・社会保険料
・通勤交通費
・営業交通費
・通信費
・パソコンや携帯電話
・営業管理システム
・福利厚生費
・研修費
などが必要です。
例えば、年収400万円の営業社員を採用した場合でも、会社が実際に負担する年間費用は、給与総額より高くなります。
正確な費用を把握するには、給与だけでなく、社会保険料や営業経費を含めた「総人件費」で計算することが重要です。
採用後すぐに成果が出るとは限らない
営業経験者を採用した場合でも、入社した翌日から十分な成果を出せるとは限りません。
自社の商品やサービス、顧客、営業方法を理解するまでには一定の時間が必要です。
営業活動を始めるまでに必要な準備
入社後は、次のような教育や準備が必要になります。
・商品やサービスの理解
・業界や競合の把握
・営業資料の確認
・顧客管理システムの操作
・トークスクリプトの習得
・先輩社員との同行
・ロールプレイ
・見積もりや契約手続きの理解
営業経験が浅い社員の場合は、教育期間がさらに長くなる可能性があります。
入社後3〜6か月程度は、会社が期待する水準に達しないことも想定しておく必要があります。
営業社員を採用する場合のリスク
採用しても定着するとは限らない
時間と費用をかけて採用し、教育した社員が、早期に退職する可能性もあります。
その場合、採用費や教育費を回収できないまま、再び採用活動を始めなければなりません。
固定費が継続的に発生する
正社員の人件費は、売上や営業成果にかかわらず毎月発生します。
新規事業や市場性が不透明な商品では、成果が出ない期間も固定費を負担し続けることになります。
会社側に教育体制が必要
優秀な人材を採用しても、営業目標、営業資料、顧客リスト、報告方法などが整っていなければ、十分な成果を出せません。
採用は人材を確保する方法であり、営業の仕組みを自動的につくる方法ではない点に注意が必要です。
営業代行へ外注する場合のコスト
営業代行とは、外部の会社や営業チームへ、新規開拓、テレアポ、商談、営業戦略の設計などを依頼するサービスです。
料金体系には成果報酬型、固定報酬型、複合型がありますが、ここでは月額固定型の営業代行を例に考えます。
営業代行で発生する主な費用
・初期費用
・月額固定費
・営業リスト作成費
・営業システム利用料
・交通費や出張費
・成果報酬
・営業資料の制作費
例えば、初期費用が10万円から20万円、月額費用が50万円の場合、年間費用は約610万円から620万円です。
ただし、業務範囲、営業担当者の人数、商談対応の有無によって料金は大きく変わります。
営業代行は営業開始までが早い
営業代行の大きなメリットは、営業経験のある人材を比較的早く活用できることです。
契約後は、
・商材理解
・ターゲットの設定
・営業リストの作成
・トークスクリプトの準備
・営業資料の確認
を行い、早ければ数週間程度で営業活動を開始できる場合があります。
正社員採用のように、求人募集、面接、内定、入社、研修という長い採用工程がないため、営業機会を逃しにくい点が特徴です。
営業代行を利用するメリット
必要な期間だけ利用できる
営業代行は、契約期間を設定して利用できます。
例えば、
・新商品のテスト販売として3か月間だけ利用する
・繁忙期の半年間だけ営業人員を増やす
・新規地域への進出時だけ利用する
・成果を確認した後に契約を拡大する
といった使い方ができます。
市場の反応を確認しながら、継続、縮小、終了を判断しやすい点がメリットです。
採用せずに営業体制を確保できる
自社で営業人材を採用できない場合でも、営業代行を活用すれば営業活動を開始できます。
採用活動に時間をかけず、一定の営業経験を持つ人材を活用できる可能性があります。
営業人数を調整しやすい
営業代行会社の体制によっては、営業量に応じて人数を増減できます。
商品が売れ始めた場合に人員を増やしたり、成果が低い場合に活動内容を見直したりできる点は、外注ならではの柔軟性です。
営業代行を利用する際の注意点
営業代行は、契約すれば必ず成果が出るサービスではありません。
自社の商品が売れる状態か確認する
商品力、価格、営業資料、ターゲット設定に問題がある場合、営業代行へ依頼しても成果が出ない可能性があります。
営業代行会社だけに責任を任せるのではなく、自社も営業改善へ参加する必要があります。
担当者の質に差がある
営業代行会社の知名度だけでなく、実際に自社を担当する営業スタッフの経験を確認しましょう。
会社全体の実績が豊富でも、担当者によって成果に差が出る場合があります。
ノウハウが社内に残らない可能性がある
営業活動を完全に丸投げすると、契約終了後に営業が止まる可能性があります。
顧客の反応、成功したトーク、断られた理由などを共有してもらい、社内に営業ノウハウを残す仕組みが必要です。
1年間のコスト比較シミュレーション
ここでは、営業社員を1人採用する場合と、月額50万円の営業代行を利用する場合を例として比較します。
営業社員を採用する場合
想定する費用は次のとおりです。
・採用費:80万円
・給与、社会保険、賞与など:年間500万円
・パソコン、携帯電話、営業経費:年間40万円
・研修や教育費:30万円
合計すると、初年度のコストは約650万円です。
さらに、最初の数か月を研修や営業準備に充てる場合、実際に成果を期待できる期間は1年より短くなります。
営業代行を利用する場合
想定する費用は次のとおりです。
・初期費用:15万円
・月額費用:50万円×12か月
・追加費用:必要に応じて発生
年間の基本費用は約615万円です。
契約後、短期間で営業活動を開始できれば、年間を通して一定の営業活動量を確保しやすくなります。
コストが同じでも成果は同じとは限らない
正社員採用と営業代行の年間費用が、どちらも600万円前後だったとしても、得られる価値は異なります。
正社員採用では、将来的に自社の営業組織をつくり、営業ノウハウを社内へ蓄積できる可能性があります。
一方、営業代行では、採用期間を短縮し、早い段階から営業活動を開始できる可能性があります。
したがって、比較すべきなのは年間費用だけではありません。
・営業開始までの日数
・月間のアプローチ件数
・アポイント件数
・有効商談数
・受注件数
・粗利益
・営業ノウハウの蓄積
・契約終了時のリスク
まで含めて判断する必要があります。
正社員採用が向いている企業
次のような場合は、営業社員の採用が向いている可能性があります。
・長期的に営業組織を拡大したい
・商品や業界の専門知識が必要
・顧客との長期的な関係を重視している
・営業ノウハウを完全に社内へ蓄積したい
・教育や管理を担当できる社員がいる
・継続的に営業案件がある
・人件費を長期的に負担できる
採用は、短期的な成果よりも、将来の営業組織をつくるための投資と考える必要があります。
営業代行が向いている企業
次のような場合は、営業代行が向いている可能性があります。
・すぐに新規営業を始めたい
・採用活動がうまく進んでいない
・新商品や新規事業の市場性を検証したい
・営業担当者を期間限定で増やしたい
・固定人件費の増加を抑えたい
・営業ノウハウや経験が不足している
・対象地域や業界を試験的に開拓したい
特に、成果が出るか分からない新規事業では、最初から社員を採用するよりも、営業代行で市場を検証する方法があります。
採用と営業代行を組み合わせる方法もある
正社員採用と営業代行は、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。
例えば、
・営業代行が新規顧客へアプローチし、自社社員が商談を担当する
・採用が決まるまで営業代行を利用する
・営業代行で売れる方法を検証してから社員を採用する
・営業代行会社からノウハウを移転し、段階的に内製化する
・繁忙期だけ営業代行を利用する
といった組み合わせも可能です。
短期的な営業力は外部で補い、中長期的には自社の営業組織を育てる方法も有効です。
判断する際に確認したい5つのポイント
1.どれくらい早く営業を始めたいか
数か月以内に営業を始めたい場合は、採用よりも営業代行の方が早い可能性があります。
2.営業活動は長期的に続くか
今後も安定して営業活動が必要であれば、正社員採用が合理的な場合があります。
短期間のテストであれば、営業代行が向いています。
3.自社に教育体制があるか
営業社員を採用しても、教育や管理ができる人材がいなければ成果を出しにくくなります。
4.市場性が確認できているか
商品が売れるか分からない段階で採用すると、固定費の負担が大きくなる可能性があります。
まず営業代行で市場を検証する選択肢もあります。
5.営業ノウハウを社内に残したいか
長期的に内製化したい場合は、採用またはノウハウ移転に対応する営業代行会社を選びましょう。
まとめ|年間費用だけでなく、スピードとリスクで比較する
営業社員を1人採用する場合と、営業代行へ外注する場合では、年間コストが近くなることがあります。
しかし、費用が同じだからといって、得られる成果やリスクまで同じではありません。
正社員採用は、営業ノウハウを社内に蓄積し、長期的な営業組織をつくりやすい一方、採用費、教育期間、固定人件費、退職リスクが発生します。
営業代行は、比較的早く営業活動を開始でき、必要な期間や規模に応じて調整しやすい一方、担当者の質やノウハウ共有の範囲を慎重に確認する必要があります。
判断する際は、
・営業開始までのスピード
・年間の総コスト
・成果が出るまでの期間
・固定費を負担できるか
・市場性が確認できているか
・営業ノウハウを社内へ残したいか
を整理しましょう。
新規事業や市場性が不透明な段階では、まず営業代行で一定期間テストし、売れる仕組みを確認した後に採用へ切り替える方法もあります。
自社の事業フェーズと財務状況に合わせて、採用、営業代行、または両者の組み合わせを選ぶことが大切です。